テニス日記/23年振りのラケット買い替え

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  • 2010/10/09 新ラケット紹介の部分にいろいろ判ってきた事を追加修正
    私のテニス歴は30年近くになりますが、使用したラケットの数は多くありません。
    最初に買ったのは木製ラケットの時代で、当時主要メーカだったカワサキラケットの「マスターストローク」というもので、 複数の素材の木を組み合わせた構造をしており、目茶苦茶重い為にフルスイングするとコケそうになっていた事を思い出します。 今のラケットに比べると面の大きさもバトミントンのラケットの様に小さかったので、皆が真ん中に当てる事を重視する打ち方をしてました。

    その後、ラージサイズやミッドサイズのアルミラケットが出現すると、その圧倒的なパワーから、皆が続々と買い換えていきましたが、 私は木製ラケットを意地の様に使い続けました。

    そして、今もなお中心的な素材として使用されているグラファイトが登場すると、さすがの私も買い替えを検討し、プリンスの廉価モデルを買いました。 モデル名は忘れましたが、サファイヤセラミックという素材を一部に採用したミッドサイズのものだったと思います。 本当はプリンスの「グラファイト」が欲しかったのですが、30年前の当時の価格で9万円もするラケットだったので、 アルバイトが十分に出来ない理工系学生にとっては無理な話でした。

    大学を卒業し就職、念願の「グラファイト」を購入しようと考えた時、追い風が吹きました。突然の円高により輸入品が全て半額となったのです。 そこで、ラケットを一生物と考え、2本買う事にしました。(結局は9万円近く使う事になりましたが、悔いはなかったですね。憧れでしたから。)

    ラケットのスロート部に書いてある製造年は1987年なので、今から23年前の物です。 同じものが2本あるとはいえ、週2回以上23年にわたり使用してきたので、完全にボロボロ状態となっています。 今考えると、こんなになるまで折れなかったのが不思議になります。「古き良い時代」の良品だったという事でしょうか。 何10回と行ったガットの張替え時には、ショップの店員に「古いから張っているときに折れても弁償しないよ」と言われた事もあります。

    グラファイトは面サイズが110インチと大きいのですが、フレームが非常に硬く、適正ポンド数も65〜75ポンドとハンパではありません。 若い頃体力自慢だった私は、張り上がり75ポンド(マシンの75ポンド設定ではなく、張りあがった後に計器で測定して75ポンドです。 マシンでは80ポンド位の設定だったかもしれません。)と強く張っていましたので、ボールを打つ毎に「カキーン」という 野球の金属バットの様な音を発していました。

    なぜその様な高テンションな張り方をしていたかと言うと、トップスピンの元祖であるボルグが、レギュラーサイズのラケットであるにもかかわらず 80ポンドで張っていたことに影響されています。また、面サイズが110インチ、いわゆる「デカラケ」に高テンションを組み合わせる事により、 フラットストロークやボレーは面中央よりもグリップ側の反発力の強い領域を使い、トップスピンやサーブおよびコントロールショットは 面中央よりも先端側の反発力の弱い領域を使い、打点を変える事で、まるで2本のラケットを交換しながら打っているかの様な、 多彩なショットが生み出せた為です。 領域を分割するのですから、面の小さいラケットでは、更にスイートスポットが小さくなりますし、 軟らかいラケットでは高テンションによりラケットを破損してしまいます。 テンションを落としたのでは全面で飛びすぎるラケットとなり、他のラケットではうまくいきません。 従って、長持ちの要因はブランドや憧れ以外にもこういったオンリーワンな所があった事があげられます。

    ただ、いままで酷使し続けた為、相当ボロボロになっており、塗装がハゲているばかりではなく、素材が露出している部分も多く、 疲労骨折がいつ起こるとも限らない状態であった為、そろそろ買い替えかと検討を始めたのでした。

    そして、いろいろ試打やショップを回り検討したあげく選んだのが、HEADのユーテックプレステージMIDです。 このラケット、反発力が極めて少ないと言われており、ユーザの殆どが学生かつ極端なハードヒッターでガットを数時間で切ってしまう様な人だそうで、 私の様な40代の人間が購入するのは、相当珍しがられました。

    使ってみて一番感じた事は、ヘッドサイズが小さい(形状が細長い)為に、とにかく振りぬきがよい事です。 330gという軽くない重量(張上げ実測は340g以上ありました)ですが、バランスがトップライトなのと、 フレーム厚が19mmと薄い為にフラット及びトップスピンの両方で空気抵抗が無いというのが要因だと思われます。

    このラケット、93インチ平方という小さい面にもかかわらず、ガットパターンが18X20と細かいものとなっています。 なんせ今まで張り上がり75ポンドというラケットを使用していた私なので、この細かいパターンは以前から興味をもっていました。 一般的にはテンションが上がった感じになるとか、反発力が弱くなる、球離れが早くなる、スピンが掛かりにくい、 ボールが持ち上がらないという事が言われています。

    私はポリタイプで1.17mmゲージのガットを55ポンドで張っていますが、 確かに打球感は少し高いテンションに似た感覚(60ポンド位かな?)があると思います。 ただ、ラケット自体の重量があるせいか、軽く振っただけでボールは飛んで行き、ネットギリギリを通過し ベースライン付近まで延びる球を打つ事ができますので、反発力が無いという感覚は私にはありません。

    このラケットの一般的な評価を見ると、常時フルスイングが必要だとか、飛ばないので厳しいという意見が圧倒的で、 打感がよい等の良い評価は少なめです。私はある意味、錯覚に陥りやすいラケットだと解釈しています。
    ボールを弾く様な打ち方しかしない人にとって本ラケットは、当たりによる飛びの差が激しく、 アウトしたり1mしか飛ばなかったりするので、ついついフルスイングしたり、ストリング等に飛びを求めたりしたあげく、 最後には悪評を吐いて手放してしまうというパターンにハマり易いと言えます。

    ただ、ボレーにしても、ストロークにしても、常にベースライン付近でバウンドする様に長さをコントロールするには、 ラケットにボールを載せて運ぶ打ち方が必項になりますが、それが最も容易にできるラケットで、 反発力の少ないポリ系のストリングを強めに張るとなお良いと思います(一般的なショップの勧めとは完全に逆ですが)。 ボールを運ぶ打ち方だと、フォロースルーにより速さ/長さ/コースを自在にコントロールできます。 また、スイートスポットに当たらなくても、ストリングにさえ当たれば相手コートには返ります。 同じラケットをお持ちで、気付いていない方にはぜひ試してもらいたいと思います。 要は「フルスイング」ではなく、「大きなスイング」を心がける事です。

    デザインに関しては、派手なラケットが多い中、逆にシンプルなデザインがルネッサンスを感じます。 それに艶有りの赤色を用いた配色が、炎天下のコートでは冴え渡り、注目度も高いです。 ヘッド部のカーボンの網みがシ−スルーになっている所もポイントは高いです。 ちなみに前モデルのマイクロジェルプレステージは正直言ってデザインが私好みからはほど遠く、とても買う気にはなりませんでしたが。

    この買い替え劇でみなさんが最も興味あるポイントは、なぜ打球面110インチという最大級のサイズから93インチという最小級のサイズに 換える事が成功したのか?という所だと思います。 左の重ね合わせた写真を見れば判りますが、実際には微々たる違いしかないという事です。 つまり、面の大きさの違いでフレームショットが大幅に増えるなんて言うのは間違いで、 スイートスポットの大きさについても、面の大きさの影響よりも他の要因(ラケットの硬さやスロート部の厚み等)の方がはるかに影響があります。 硬くてスロート部の厚いラケットは少しでもスイートスポットより先端の方向に外すとボールは殆ど飛びません。 スイートスポットの位置は面が大きくなる程グリップに近いですから、遠心力が小さくなり、結果的に非力なラケットとなります。 面が小さい程難しいというのは以下の様な要因によるもので面積は関係ないと考えます。
     ・ 面が小さい事で見かけ上のガットテンションが上がり飛ばない/スイートスポットが狭いと感じる
     ・ 面が小さい事で見かけ上のガット密度が上がり回転が掛からない/持ち上がらないと感じる
     ・ 遠心力を生かしたスイングをしていないのでリーチの長さを生かせない
     ・ ラケットメーカが意図的に面が小さいものに対して上級者しか使えない様なスペックに設定している
    極端な話、メーカのやる気次第では、90インチの初心者用ラケットができてもおかしくはないと、私は考えています。 例えば、13x15程度のガットパターンにするとか、全長を1/2インチ程度短くするとか、方法はいくらでもあります。

    次に、いわゆる「厚ラケ」と呼ばれるラケットの厚みに関してですが、グラファイトよりも若干プレステージ(19mm)の方が厚いです。 ただ、正面厚についてはプレステージの方がはるかに細いので、総合的にはグラファイトの方がゴツいと言えます。 22〜26mmの厚みが普通の現在からすると、どちらも俗にいう「薄ラケ」の部類に属する事は間違いないですが。

    グラファイトはバブルの時代に製造されたものですから素材が相当硬く、スロート部が薄くてもスイートスポットより先端は殆ど飛びません。 それに対してプレステージは柔らかいので、スイートスポットを含め、先端から根元まで、安定した飛びが約束されています。 これは上系のショット(サーブやスマッシュ)の安定およびスピードアップに大きく寄与します。

    プレステージは決してハードヒッター専用ではなく、ゆったりとしたスイングで十分にボールを載せ、 結果的にフラットの早い球を打つタイプの方が合っていると思います

    プレステージのロゴの部分ですが、ここの字体の選択が唯一私が気にいらない所です。 社名の「HEAD」という太字のロゴと全くマッチングしていない気がします。 また、「MID」というのも数年先には死語になるかもしれませんので、「93」みたいな判りやすい表現にした方がよいかもしれません。

    なぜか片面にしか入らない「YOUTEK」のロゴです。これは最近リリースしたHEADのラケットで共通に使われていて、 何年か後になって製造時期がわかり易くてよいと思います。

    これはYOUTEKの反対側の内側にあるプレステージのロゴです。これについても字体の選択が気にいらないですが、 字が大きい割りに全く目立っていないので許せます。無い方がよいのではと思います。

    トップ部内側にあるHEADのロゴはこのモデルのみ銀色の文字色となっています。 カーボン繊維がシースルーの塗装とマッチングが極めて良いです。 メーカさんのこのモデルへの思い入れが伝わってきます。

    グリップの形状については賛否両論がありますが、楕円というか扁平形というか、ラケットの打面と平行な面が低くなっています。 私はフォアでもバックでもトップスピンを打つときは、ウエスタングリップではなく、 イースタングリップで打つので、手の平とグリップの干渉が少なくて良いです。 (このラケットはスピンで持ち上がらないので、ウエスタングリップで打つのは特にバック側で無理があると思います。) また、私はシンセティックグリップのフニャフニャした感覚が嫌いなので、レザーグリップに換えて、さらに薄いオーバグリップを巻いています。 オーバグリップの巻き方ですが、私の場合は巻き始めの手の平が当たる部分は殆ど重ねずに巻き、 親指から人差し指に掛かる部分については逆に重ね過ぎる位にしています。

    スロート部の正面厚は極めて幅狭くなっており、スイング時の空気抵抗を小さくする大きな要因になっていますが、 これでハードヒット時の安定性が確保されているのですから、技術の進歩というものを感じます。 また、このモデルの最良点とされている優れた打球感もこの部分で生み出されているのではないかと思います。 もちろんデザイン面でも最も心地良い部分です。

    トップ部のみならずサイド部を含む広範囲に装着されている専用のバンパーガードです。 私の様にラケットを酷使し、すぐにボロボロになる人にとっては非常に有り難いです。 他のラケットはなぜかトップ部にしか装着されませんが、 それだと地面ギリギリのボールに対してラケットを立てる様な打ち方しか想定されていませんね。 一般的にも、トップ部を地面に擦る確率よりも、サイド部を地面に擦る確率の方が高いと思いますので、 全てのラケットに搭載して欲しいですね。



    ブリッジの部分ですが、ガットのガイド部が立体的な円弧形状になっています。これがYOUTEKの一部分でしょうか。 見た目はバボラのウーファーシステムと同じ様に感じますが、私にとってはどうでもよい事です。 プレイヤーを助けてくれるラケットの機能には全く興味ありませんので。



    今までテニスに関しては道具に対して無頓着だったのですが、今回の買い替えによりその意識は多少変わりました。 新しく購入したユーテックプレステージMIDについても、大変完成度の高いラケットで直ぐに気に入りましたので、 また20年位使用するかもしれませんし、それだけの器を持った製品である事も間違いないと思います。 でも、それは年齢からして無理?なんせ還暦を軽々と越えてしまうので...

    (2010/08/08記)
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