USB方向転換アダプタの製作

今やパソコンの標準インターフェースとも言えるUSBですが、 パソコン側コネクタ(ジャック)が縦横に密着して並んでいる事が多い為に、USBメモリ等のサプライ製品は細長い物が多いです。 (Bluetooth用アダプタ等で非常に出張りの小さいものがありますが、まだまだ少なく、高価なものとなりますね。)
デスクトップパソコンの場合は良いのですが、ノートパソコンの場合はこれがとても邪魔に感じます。 USBコネクタの方向を転換するものが標準品で有ればよいのですが、実際は有りそうで無いですね。 ケーブルの出口が回転する物が各社より出ていますが、コネクタの長さは全く変わらなかったとかで... 結局は自作する事にしました。
なお、決まり文句ですが、実践についてはあくまでも自己責任でお願いします。

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私が所持しているノートパソコンはUSBのジャックが左右手前にしかありません。 写真の様に、まともにマウス本体と干渉して操作面の影響があります。
また、新幹線などの移動中にノートパソコンを使用する際、USB機器の出張りが隣の席の人に干渉したり、 誤って何かがUSB機器に当たってUSB機器自体あるいはパソコン本体を故障させてしまう可能性もあります。
USB機器をノートパソコンに沿った方向に挿入できるように方向転換する(水平方向に90°回転し、かつ90°ひねる) 事ができれば、この様な事から解決すると考え、本アダプタの製作を行いました。

まずUSBコネクタを入手しました。 購入したのは金属の部分のみで構成された簡易的なUSBプラグとプリント基板用のUSBジャックです。 これは通常の電気量販店には置いていないので、関東でしたら秋葉原、関西でしたら日本橋、その他でしたら通販での購入となるでしょう。 私は「ジャンク屋」と呼ばれる電気部品のガラクタ屋?で購入していますが、50〜300円位で手に入ります。

USBコネクタ以外の部品では、0.8mm径のポリウレタン電線、φ20mmの熱収縮チューブ(収縮率1/3のもの)、 φ1.5mmの熱収縮チューブ(こちらは通常の収縮率のもの)を使用しました。
適当な線材が見つからなかったのでポリウレタン電線にしましたが、これは仕上がりが汚くなりがちなので、私はあまり好きではありません。 0.3sqまたは0.5sq程度の単線芯のビニル被覆電線があればそちらの方が早く綺麗にできると思います。 より線(細い銅芯が複数集まって電線芯を形成しているもの)を使ってもよいのですが、 自由に曲がる分成形が難しく、ハンダ付けや組立作業時のクランプ方法を考える必要があります。

まず、USBジャックにハンダを盛っておきます。 これはプリント基板用の部品なので接続する部分が電線を直接ハンダ付けする様には出来ていない為です。

次にポリウレタン電線の先端にハンダ付けしながら同時に被覆を剥きます。 この作業が同時に出来る所がこの電線のウリなのですが、被覆は溶けにくいのでハンダこてのパワーがないと苦労します。 電線の方向にシゴきながらハンダを溶かすのがコツです。 電線の全周においてハンダが流れたのを確認してから、コテを離して冷却、被覆の焦げを取り除きます。

上記ポリウレタン電線の処理を4本分/両端について行います。私が購入したUSBコネクタの場合は15mm程度の長さで作成しました。

作成した電線をUSBジャックにハンダ付けします。 前述している様に、プリント基板用の部品なので慣れていない人には難易度が高いかもしれません。 出来るだげ接着面積を大きく、出来るだけ密着して、出来るだけ少ないハンダ量で、ハンダをきちんと流す必要があります。 さもないと、後の曲げ加工や、実際の使用時に断線する恐れがあります。 こういった部分には、ハンダを常に新しく溶かしながら作業を行い、 もし失敗したら綺麗にハンダを取り除いてから再チャレンジする方法が良いと思います。

ハンダ付けした部分の絶縁の為、熱収縮チューブで処理します。これは後でUSBプラグのハンダ付けする部分以外について行います。 ポリウレタン電線の被覆だけでも電気的絶縁性はあるのですが、後工程の曲げ作業や完成後の荒い使い方に耐える為です。

ストレート接続(同じピン番号同士の接続)を確認しながら、USBプラグのハンダ付けを行います。 これは電線接続用のコネクタなので容易です。

いよいよ曲げ作業です。ケーブルに負担が掛からない様、垂直旋回、水平旋回、ひねりを同時に行います。 曲げる方向はパソコンより違いますので確認しておきます。 この作業はとにかく急がない事が重要です。 ビニルテープを先端に巻きつける等、キズが付かない様に工夫したペンチを使って、ゆっくり慎重に曲げて行きます。 最終的な姿勢が決定したら、プラグ側の金属(通常ならばケーブルをクランプする部分)を曲げ/カット加工して、 反挿入側をカバーします。これによりプラグ内部の白いコンタクト部分が挿入時に後ろにズレるのを防いでいます。

さて、4本の電線以外にも必ずしないといけない接続があります。それは金属シールド部の接続です。 プラグ/ジャックそれぞれの金属部分を溶接する様にハンダ付けします。これにより電気的に接続すると同時に機械的にも結合します。
使用中に取れてしまわない様に、ハンダが完全に流れるまで根気よく加熱します。 ハンダこてはハンダにではなく金属部分に当て、ハンダは間接的に溶かすのがコツです。 十分に冷却し、完全に固まったらヤスリ掛けを行い角の部分を落とします。

最後に外観の仕上げとなりますが、これは自作派にとってもっとも頭の痛い問題です。 綺麗に仕上げようとすればするほど、ケースの費用が掛かったり、専用の工具が必要だったりします。
そこで私の場合は高圧縮率の熱収縮チューブをよく使用します。 どんな複雑な形状でもドライヤーを当てることで勝手に成型してくれますので便利です。 また、高圧縮率ののものは肉厚があり、十分に保護/防水カバーとなってくれます。
熱収縮チューブを斜めにカットし、製作したアダプタを包ませます。

ドライヤーを当てて収縮させます。ゆっくりと満遍なく行います。 熱収縮チューブは径方向の収縮温度の方が長さ方向の収縮温度より低い特性があります。 今回の場合は形状が直線上ではないので長さ方向にも収縮して欲しく、 パワーのあるドライヤーを使用しました。

収縮させたら、余った部分をカットして完成です。
高圧縮率の熱収縮チューブというのは本当に優れものです。電気系以外の分野でも十二分に使えますね。
早速ノートパソコンに挿入してみましたが、目論見通りの使い勝手となりました。 出張りが少ない分、装着したまま移動ができるので無くす心配がないですね。無くしても普通に挿せばいいだけなのですが...


(2009/02/08記)

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